出展社 ラムナン株式会社(2008年度 出展)
連携先団体 志摩市商工会 、三重大学社会連携研究センター

(株)江南化工と三重大学は、青のり(ヒトエグサ:通称アオサ)に多く含まれる「ラムナン硫酸」の機能性に関する共同研究を実施、さらに三重大学発ベンチャー「(株)機能食品研究所」と医学部附属病院とが協力し食品としてヒト試験を実施し、その機能の有効性を確認していた。

一方、三重県は青のりの生産が全国1位であり、特に志摩市は県内で有数の青のりの生産地であることから、志摩市商工会が青のりを使った製品開発を望んでおり、三重大学が中心となりラムナン硫酸の特徴を活かした化粧品としての活用を企画していた。
三重大学ではこの企画段階で、ラムナン硫酸から作られた機能性食品(ラムナノハイジャン)やラムナン硫酸の保水性などの特徴を活かした試作品をアグリビジネス創出フェアに出展することを提案、(株)江南化工が設立した新会社ラムナン(株)と三重大学とが共同で研究成果を取りまとめた上で、試作段階の化粧品「あおさクリーム(案)」を作成し、アグリビジネス創出フェアに出展した。
会場においては、研究成果について様々な意見を頂くとともに、試作品に対するアンケート調査を実施、「クリームとしての機能は優れている」「保湿性もあり、使用感も良い」等の感想を得た。これにより、関係者が共同研究の成果を活用した製品開発への手応えを感じ、自信を持つ事ができた。

また、三重大学においては、本事例のような地域特産物の商品化への取り組みをきっかけとして、他企業からも研究シーズや共同研究に係る打診が増大、産学連携の活性化に繋がっている。

ラムナノハイジャン 伊勢志摩真珠クリーム


「あおさクリーム(案)」の開発は、食品として利用されてきた「青のり」を、食材としてではなく、その成分であるラムナン硫酸の特徴を活かした素材として活用し、化粧品材料としての新たな活用方法を提案したものであり、研究成果を活用し、農山漁村の資源の新たな活用による市場開拓を行った事例である。
 また、地域の商工会や商工会議所が希望する、「地域資源の活用」や「農商工連携」に沿った形で、研究開発の成果が活用された事例でもある。
本事例では、アグリビジネス創出フェアを、新たな共同研究の連携先の開拓のみではなく、このフェアを一つのきっかけとして活用し、試作品の作成や研究成果のPRを進めるなど、既存の産学連携の体制を強化し、研究成果の活用を促進した。フェア当日の展示内容等について、出展者がコーディネーターと密接に連携したうえでフェアへ出展した結果、関係者間で具体的な研究成果の活用のイメージを共有することができた事が、産学官の連携強化に大きく役だった。

 アグリビジネス創出フェア後、ラムナン(株)は、ラムナン硫酸の具体的な化粧品材料化の取り組みを開始した。志摩市商工会は、商品の生産コストを下げるため、ラムナン硫酸の基となる青のりの仕入れなどにも関与し、研究成果の活用のため、両者が密接に連携し活動している。その結果、この試作品「あおさクリーム」は、アコヤガイの成分を加え「伊勢志摩真珠クリーム」として商品化した。現在、三重県内の化粧品メーカーである万協製薬株式会社等から販売されている。
 また三重大学においては、共同研究によって機能性が実証された成果が具体的に地域振興に役立っている事例を広く産学官の関係者にPRすることができた。さらに、地方自治体や他企業など、産学官の関係機関との連携の強化を進めるきっかけとして本事例を活用している。このように、フェアの効果は様々な面で拡がっている。

三重大学
社会連携研究センター
特任教授 松井純 氏


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