COMMENDATION表彰
平成28年度(第17回)民間部門 農林水産研究 開発功績者表彰
農林水産業その他関連産業に関する研究開発に関して優れた功績をあげた民間企業や農林漁業者に対して、農林水産大臣賞、農林水産技術会議会長賞、JATAFF会長賞を授与するとともに、農林水産大臣賞受賞者による受賞講演を実施します。
【農林水産大臣賞】

コンテナ収容式キャベツ収穫機の開発

キャベツ収穫機開発グループ

【左】代表 ヤンマー株式会社 丸山 高史
 【右】代表 オサダ農機株式会社 長田 秀治

 重量野菜であるキャベツの収穫作業は機械化が遅れており、コスト低減と規模拡大の大きな支障となっている。 本機は、長年の研究開発の蓄積を踏まえて改良を重ね、キャベツの刈取り・選別調製・大型コンテナへの収納を機上で一貫してできる高能率のキャベツ収穫機である。 これにより、収穫に要する労働時間の削減、軽労化、段ボール等の資材費の低減が達成できた。

プリン体に作用する乳酸菌を活用した機能性ヨーグルトの開発

株式会社明治研究本部

【左から】山田 成臣、狩野 宏、坪井 洋、髙林 卓也、伊澤 佳久平

 高尿酸血症は痛風等の発症リスクを高めるとの報告がある。高尿酸血症となる要因の中で、食物に含まれるプリン体の過剰摂取による尿酸の産生・排泄バランスの崩れに着目し、プリン体を腸管で吸収されにくい構造に分解する活性が高い乳酸菌を発見した。この乳酸菌が持つプリン体の吸収低減効果を科学的に明らかにし、機能性ヨーグルトとしての製品化と普及を図った。

連続的加熱成形による水産練り製品の製造

日本水産株式会社

【左から】吉富 文司、水城 健、橋立 知典

 常温で流通する水産練り製品は、原料をケーシング(内装フィルム)に充填後、ボイル等の外部加熱方式で製造されている。これを、原料を垂直吐出しながらマイクロ波で内部加熱することで、連続的な加熱成形を可能にし、ケーシング包装を必要としない画期的な製造技術を確立した。この技術によって、工程の簡略化、資源及びエネルギーの節約を実現でき、得られた製品の二次加工も容易となり、高付加価値化と原価低減に貢献した。
【農林水産技術会議会長賞】(民間企業部門)

飼料用米破砕機の開発

【左】元株式会社デリカ 平林 哲
 【右】株式会社デリカ 矢ノ口 正

 飼料用米を籾のまま牛や豚に給与すると、籾殻が難消化性であるため未消化籾が発生し、栄養ロスが大きな問題となっていた。このため、籾殻の剝離と子実の破砕を低コストで効率的に実現できる飼料用米破砕機をわが国で初めて開発した。本機の市販化と普及を契機に、他社でも同様の破砕機が開発されるなど、飼料用米の普及に貢献した。

農産物や食品の簡易迅速なDNA分析技術の開発

株式会社ニッポンジーン

峯岸 恭孝

 米の品種について、コシヒカリか否か、他品種の混入があるか否かを短時間で、かつ、簡便に判別できる検査キットを実用化した。また、農産物・食品からDNAを精製することなく、直接検出可能なPCR用試薬を開発した。これは、様々な試料に適用でき、材料由来のPCR阻害物質の影響を受けにくく、簡易に標的遺伝子を検出・定量することができる画期的技術である。

麦ごはんが美味しく炊ける炊飯技術の開発

タイガー魔法瓶株式会社

【左から】金丸 等、遠藤 学、朝岡 修平、井上 友見、長﨑 泰子

 大麦(押麦・もち麦)は、健康機能性が注目されている水溶性食物繊維(β-グルカン)を多く含んでいる。このため、体にいい麦ごはんを美味しく炊けるように、白米と麦の吸水特性の研究を基に、麦ごはんに最適な炊飯メニューを開発し、炊飯器として製品化した。白米はふっくらしっかり、大麦は柔らかく弾力があり、また、麦特有の臭いの抑制にも成功した。

有機性排水処理のための伏流式人工湿地ろ過システムの開発

株式会社たすく

家次 秀浩

 寒冷地において高濃度の有機性汚水の浄化処理が可能な世界初の伏流式人工湿地ろ過システムを開発した。酪農雑排水を低コストで浄化でき、北海道及び東北地域の酪農地帯で普及している。有機物や窒素の濃度が生活排水よりも大幅に高くても、長期にわたり安定的に浄化でき、酪農の生産活動に伴う環境負荷の軽減などに貢献した。
【農林水産技術会議会長賞】(農林漁業者部門)

トマトの高軒高低コスト耐候性ハウス及びハイワイヤー誘引栽培技術の開発

【左】農業生産法人
サンファーム・オオヤマ有限会社
 大山 寛
【右】全国農業協同組合連合会 栃木県本部
 野尻 重利

 わが国特有の夏の猛暑、強風、降雪等の気象条件にも耐えられ、トマトの8月定植で翌年6月までの長期間にわたり収穫できる、日本型の高い軒高の低コスト耐候性ハウスを開発した。さらに独自の誘引器具と高所作業車を開発し、作業の軽労化と収量向上を実現したハイワイヤー誘引栽培技術を確立した。これらにより、経営の安定化に大きく貢献するとともに、技術内容を公開することで全国に広く普及した。
【公益社団法人農林水産・食品産業技術振興
協会会長賞】

露地栽培向け園芸用耐候性LED電球の開発

株式会社エルム

【左から】桐原 弘、竹内 秀樹、橋口 満洋、神浦 由美子、内田 克彦

 南西諸島では無加温によるキクの露地電照栽培が盛んであるが、風雨等の過酷な露地環境に耐え得るLED電球がなかった。こうした環境でも使用可能な画期的な防水機構の開発と軽量化を実現し、世界で初めて園芸用耐候性LED電球を開発した。これにより、省エネ効果の実現と台風等による停電に伴うリスクの低減に貢献した。

パイプハウスの低コスト強靭化金具の製品化

佐藤産業株式会社

直木 武之介

 わが国の施設園芸は比較的強度の低いパイプハウスが主であるが、近年の大型台風や大雪によるハウス倒壊の被害が多く、その対策が大きな課題であった。パイプハウスの構造強化には、アーチを二重にした構造が有効であり、これを確実に補強できる低コストの金具を開発して製品化した。本技術の普及により、新設ハウスの低コスト化・強靱化や既存ハウスの補強に貢献した。
平成28年度(第12回)若手農林水産研究者表彰
農林水産業その他関連産業に関する研究開発に関して優れた功績をあげた若手研究者に対して、農林水産技術会議会長賞を授与するとともに、受賞者による受賞講演を実施します。

経口投与が可能な豚丹毒菌生ワクチンの開発

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門

小川 洋介

 豚に敗血症、蕁麻疹、関節炎等の症状を引き起こす豚丹毒に対する新しい生ワクチンを開発するため、起因菌である豚丹毒菌のゲノム解読結果を基に病原因子を欠損させて、遺伝学的に弱毒化機構が明らかな弱毒生ワクチン候補株を開発した。本候補株は経口投与で免疫を誘導できるため、省力型ワクチンとしての利用が期待される。

ガスプラズマを用いた殺菌技術の農産物への応用

国立大学法人 琉球大学

作道 章一

 窒素や空気等の不活性ガス中で発生させたプラズマで処理することで、安全で効率的な農産物の殺菌技術の開発を行うとともに、実用化に向けて、選果中に利用できるガスプラズマ殺菌装置を考案した。また、ガスプラズマ殺菌の広範な病原体や毒素への有効性を証明し、新しい殺菌法の基盤を構築した。

デジタル土壌図と農地放射性物質濃度分布図の作成

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター

高田 裕介

 土壌の種類毎の分布状況を示した土壌図に、新しい農地の分布状況を反映して「デジタル農地土壌図」を作成し、「土壌情報閲覧システム」としてウェブ公開した。また、東京電力福島第一原子力発電所事故の際には、当土壌図を用いて「農地土壌の放射性物質濃度分布図」を作成し、自治体等の除染計画の策定に貢献した。

土石流シミュレータの開発と防災対策への適用

国立大学法人 京都大学大学院

中谷 加奈

 山地渓流での土石流の発生・流動から、扇状地などの住宅地での氾濫・堆積過程までを一連に計算できる土石流シミュレータを開発した。マウス等を使っての操作やGISとの連携により情報の入出力を視覚化し、直感的な理解を助けることで、専門家以外のユーザーにも扱いやすく、具体的な影響範囲の把握や防災対策の検討を容易にした。

イサダからの新規肥満抑制物質8-HEPEの同定及び抽出方法の開発

公益財団法人 岩手生物工学研究センター

山田 秀俊

 三陸地域に特有の水産資源であるイサダ(ツノナシオキアミ)から抽出した8-HEPEに抗肥満効果があることを世界で初めて明らかにし、その抽出方法を開発した。8-HEPEは、魚の油に含まれる不飽和脂肪酸EPAに比べ、脂肪の燃焼を促進する効果が約10倍高く、生活習慣病への新規機能性素材として、新たな機能性食品やサプリメント商品等への活用が期待される。