2017年10月4日(水)~6日(金)
10:00~17:00
会場:東京ビッグサイト東7ホール
主催:農林水産省
SEMINARセミナー
【C103】11:00~12:45 セミナールームC
事業化促進研究

「バイオコークス化による未利用バイオマスの有効利用技術の開発」

近畿大学 バイオコークス研究所 専任講師

冨田 義弘 氏

刈草・竹・剪定枝などの草本系バイオマスは有効活用が困難で廃棄費用も高い未利用の資源です。これらを近畿大学の発明した高度なバイオコークス化技術を利用することで、輸送が容易で保管性に優れ、石炭などの化石資源の代替となる高品位で省エネルギー性の高い固形燃料の開発に取り組んでおります。エネルギーの地産地消を視野に入れた地域の活性化への貢献を目指します。

「新たな熱分解システムによる小型・高効率なバイオ燃料製造・利用技術の開発」

遠野興産(株)代表取締役

中野 光 氏

化石資源が乏しい我が国では、森林資源のエネルギー利用が重要ですが、従来のチップやペレットなどは用途の汎用性や経済性などの面で課題があり普及が限定されています。ここでは、木質バイオマス資源を対象に、重油相当の熱源用燃料として利用可能な液体バイオ燃料を製造する小型で高効率かつ簡易・低コストなシステム開発の取り組みを紹介します。

「バイオマス熱分解技術による畜産廃棄物等の再資源化・環境対策システムの開発 」

明和工業(株) 営業技術部 サブマネージャー

清水 浩之 氏

畜産業や食品産業等で発生する、家畜排せつ物や汚泥などの高含水率で臭気を有する低質な廃棄物の、処理・処分・利用が課題となっています。ここでは、処理時間を要し設備が大規模・高コストとなる堆肥化やメタン発酵等の従来利用技術に代わる、熱分解技術を用いることで有用なエネルギーや資材に転換する技術開発の取り組みを紹介します。

「バイオマス由来の乳酸を用いた新たなバイオマテリアルの開発」

(株)ビーエムジー 代表取締役社長

玄 丞烋 氏

「再生医療」への注目が高まる中で、高い生体適合性や生分解性、低融点という物性を持つ「バイオマテリアル」としてのポリ乳酸の優位性が見直されつつあります。ここでは、バイオマス由来のポリ乳酸を用いた骨固定材・細胞再生用足場素材といった高付加価値な再生医療用素材開発の取り組みを紹介します。

「黒ウコンの安定生産システムの構築及び高齢化社会のQOL向上に向けた機能性食品等の開発」

京扇産業(株)常務取締役

西田 義昭 氏

黒ウコンは塊根に、ポリメトキシフラボンに代表されるポリフェノール等の機能性成分を豊富に含みます。健康食品の拡大に伴い塊根乾物素材の需要が年々増加していますが、現状ではほぼ全量を輸入に頼っています。そこで、優良な黒ウコン種苗の安定供給システム、高品質塊根の安定した国内栽培生産システムの開発に取り組んできました。ポリメトキシフラボンの機能性とともにこれらシステムについてご紹介いたします。

「産地及び流通過程におけるエネルギー消費を劇的に下げる冷凍・冷蔵用新型キャパシタの研究開発とその実用化」

ナノサミット(株) R&D 主任研究員

真鍋 翔一 氏

農業・食品分野で共通する課題である冷蔵・冷凍需要におけるピークシフトと、急速充電を可能にする大容量で安全、耐久性のある新タイプバッテリーの開発に取り組んでいます。カーボンナノチューブとナノセルロースを複合させた三次元ナノハイブリッドの新材料により、実用性の高いキャパシタの開発を目指します。

「高鮮度国産エビ生産のための効率的無換水養殖技術の実証研究」

日本水産(株) 中央研究所 主席研究員

三星 亨 氏

高品質で安全安心な高鮮度の国産バナメイエビを、低コストで安定供給できる技術開発に取り組んでいます。親エビの成熟・採卵技術や稚エビ生産の基盤技術の開発を行い、更にはろ過設備不要のバイオフロック技術を導入した閉鎖式養殖システムによる、実生産規模での実証試験を実施しており、その概要についてご紹介します。

【A108】12:15-15:15 セミナールーム A
農林水産業における革新的技術体系の開発セミナー

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター

現在実施中の革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト・経営体強化プロジェクト)の概要についてご説明申し上げます。

「石川県における企業と連携した水稲の低コスト生産技術の取り組み」

石川県農林総合研究センター 所長

島田 義明 氏

耐久性と汎用性が優れたブルドーザーを改良し農機として利用する技術と、水稲育苗箱当たり乾籾250~300g播種して育苗した苗を専用田植機で株当たり3~4本移植することで苗箱の使用箱数を1/3、播種・育苗労力を1/3、播種・育苗資材費を1/2に削減することができる密苗移植栽培技術について、その開発の取り組みを紹介します。

「湛水栽培法によるサトイモの優良種いも増殖および生産性向上」

(国)鹿児島大学農学部 教授

遠城 道雄 氏

南九州は有数のサトイモ産地ですが、干ばつや集中豪雨、病害虫の増加などによる種いもの供給不安定が原因で、出荷用サトイモ生産が減少しており、健全種いもの十分な確保が望まれています。本研究は、新しく開発した「畝立て、マルチによる湛水サトイモ栽培法」で優良種いも生産の向上を目指しています。 この方法では、サトイモを水稲と同様に水を溜めながら栽培することで、線虫や乾腐病の発生を抑制でき、規格に適したいも個数が増加し、収量も向上します。さらに、親いもを利用した増殖方法、加工品開発についてもご紹介します。

「イチゴ生産を変革する種子繁殖型品種「よつぼし」の普及と活用」

三重県農業研究所 生産技術研究室長

森 利樹 氏

イチゴ種子繁殖型品種「よつぼし」は、従来の栄養系品種と異なり、種から育てる品種として、イチゴの生産体系を変革することが期待されています。2016年に種苗販売が本格的に始まり、まだ大半が試験的な取り組みであるものの、全国各地で栽培されました。また、海外に向けては、パートナー企業を公募し、海外での権利取得と事業展開を並行して進める新しい取り組みにチャレンジしています。本報告では、これらの情報を提供し、今後の発展に向けた新品種の活用方向について紹介します。

「UECSを有効活用した低コストでスマートな施設園芸の実現」

(国)岡山大学農学部 准教授

安場 健一郎 氏

日本の施設園芸は転換点にきています。植物工場のような大規模施設園芸が普及し始め高度な環境制御技術に注目が集まっています。しかし、従来型施設には施設園芸を高度化するコンピュータによる環境制御はほとんど普及していません。
そこで、環境制御のルールがオープンなUECSを活用して高度な生産性を有する環境制御技術を安価に提供する手法を開発し、開発した技術の生産現場への普及に対する取り組みをプロジェクト研究「UECSプラットホームで日本型施設園芸が活きるスマート農業の実現」で実施しており、その概要について紹介します。

「国際競争力強化と輸出拡大のための超大玉オウトウ生産・加工技術開発」

山形県農業総合研究センター園芸試験場 研究主幹(兼)果樹部長

長岡 正三 氏

オウトウ産地の持続的発展を図るためには、国内需要のさらなる拡大や海外市場も視野に入れた国際競争力の強化、高付加価値加工品の開発生産販売等によるブランド力向上を図る必要があります。
そこで、山形県では、さくらんぼ世界一PJを立ち上げるとともに、国内外で差別化ができる超大玉で高品質のオウトウ栽培技術の開発、輸出相手国の残留基準に適合した防除体系の確立、形状や食感、風味の良い加工技術の開発、そして現場での実証試験に3年計画で取組んでおります。今回は、試験研究計画の概要と1年目の取組み状況について発表します。

「新規BODセンサーを利用した豚舎排水からの窒素除去システムの開発」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門 主任研究員

横山 浩 氏

排水中に含まれるアンモニアや硝酸イオンなどの窒素(N)は環境負荷物質なので、排水処理の過程で除去しなければなりません。窒素を除去するためには、排水中のBOD(有機物量の指標)とN濃度の比(BOD/N比)に応じて浄化槽の曝気(空気を吹き込むこと)を高度にOn/Off制御する必要があります。我々は独自に開発したリアルタイムBODバイオセンサーを利用してBOD/N比が最適になるように曝気を制御して、豚舎排水中の窒素を除去する水浄化システムを開発しています。本システムは周辺の水環境と調和した養豚業への貢献が期待できます。

「カラマツ種苗の安定供給のための技術開発」

(国研)森林研究・整備機構森林総合研究所 林木育種センター 育種第一課長

高橋 誠 氏

近年、木材として需要が高まっているカラマツの苗木が不足しています。元来、カラマツの種子生産には豊凶があるため、苗木不足の問題解決には種子の安定的生産技術が必要です。そこで、本プロジェクトでは、安定的に種子を生産するための着花を促進する技術や成熟した種子を適期に効率良く採取するための技術、限られた種子から多くの苗木を育成するための苗木生産の技術開発に取り組んでいます。現在、3年間のプロジェクトの折り返し地点にさしかかりつつあります。現段階で得られている成果についてその概要を紹介します。

「スラリーアイスを活用した鮮魚のスーパーチリング高鮮度輸送」

(公財)函館地域産業振興財団(北海道立工業技術センター)研究開発部研究主幹

吉岡 武也 氏

スーパーチリングは0~-5℃の温度域で、酵素活性の低下と微生物の発育抑制により、従来の氷蔵に比べて魚の鮮度保持が数倍可能とされています。本課題では、高効率冷却、サブゼロ温度、定温維持といったスラリーアイス(シャーベット状海水氷)の機能に着目し、急速冷却による活け締め効果、低温による鮮度と旨味の保持効果などを科学的に立証しました。さらに、水産物の水揚げ、流通現場でスーパーチリングの有効性を実証するために、漁船上でスラリーアイスを製造する省電力製氷機などのハード開発を行いました。その成果を報告します。

【C111】13:00~14:45 セミナールームC
生産現場の夢トーク2017~都道府県普及指導機関が構想する生産現場の課題解決を紹介し、取組に協力いただける企業・研究機関等を募集します!~

「米農家の夢~従業員にも快適なこめづくり~」

千葉県農林水産部担い手支援課 専門普及指導室 主席普及指導員

市原 重信 氏

担い手の高齢化や減少が進む反面、今後の米作りの担い手に対しては更なる活躍が求められる。そこで、雇用者も含めた米作りの担い手に対する快適で効率的な作業体系が望まれる。この一環として、春作業の作業数の省力・軽労化は重要であり、現在、水田の見回りを省力・省人化するため、水田センサーが開発されたが、広く普及するには更に低コスト化する必要がある。このためには、1箇所1,000円以内で移植10日間の水位調節ができるなど、とくに要望の多い機能に絞り込んだシステムの開発が求められる。さらには、水稲のIoTとして、水位調整まで行う、低価格自動給水システムが有用と考える。

「少量土壌培地耕を利用した仏花用の花き栽培の普及」

滋賀県東近江農業農村振興事務所 農産普及課 東部普及指導第一係 技師

籠 洋 氏

滋賀県は農業産出額の54%を水稲が占めていますが(平成27年度実績)、法人を中心に園芸作物との複合経営が広がりを見せています。花では2年前から全県下で、少量土壌培地耕(本県が開発した少量の土壌を用いた養液栽培)を利用し、JAと共に8月お盆用のキクを60cmの短茎で栽培することを推進しています。このキクは契約栽培のため、販売単価が決められており、省力的かつ低コストで栽培することが必須です。そのための栽培ベンチ、定植後の遮光資材、培地に関する情報をご提供いただける方々との連携を願っております。

「南但馬地域の特産物における生産安定技術の確立」(ねぎ収穫機・皮剥き機)

兵庫県朝来農業改良普及センター

平野 温子 氏

兵庫県朝来市では、軟白ねぎと葉ねぎの兼用品種である「岩津ねぎ」の栽培が古くから行われています(栽培面積:約26ha、生産者数:216名程度)。今後、高齢化による産地の縮小が懸念され、若い担い手の確保と一戸当たりの規模拡大が喫緊の課題です。現在、機械化一貫体系による省力技術の確立に取り組んでいますが、最も時間のかかる収穫・出荷調製作業(10aあたり作業時間は、605時間)は目処が立っていません。そこで、「岩津ねぎ」用の収穫機、皮剥き機等出荷調製機械の開発に取り組んでいただける機関を募集致します。

「南但馬地域の特産物における生産安定技術の確立」(ほうれんそう残根回収機)

兵庫県朝来農業改良普及センター 普及主査

村上 玖仁子 氏

兵庫県養父市の「おおや高原」では、平成3年から雨よけハウスでほうれんそうを主体とした野菜の有機栽培を行っています。しかし、長年の連作により、夏季のほうれんそう栽培でフザリウムによる萎凋病が多発し収量が低下しています。熱水消毒技術では、ほ場条件が限定されたり、労力・コストがかかるため、産地全体には普及していません。そこで、フザリウムの菌密度を抑制するために、収穫後に土壌中のほうれんそうの残根を除去する回収機の開発を目指しています。その技術確立を連携して取組んでいただける機関を募集致します。

「肉用牛肥育現場における事故軽減を実現する畜産生産管理システムの開発」

香川県農政水産部農業経営課 農業革新支援グループ・主任専門指導員(農業革新支援専門員)

谷原 礼諭 氏

肉用牛肥育農家は導入した牛は全頭出荷したいはず!ところが、肉用牛肥育現場では、牛が立ち上がれなかったために、曖気障害を起こし窒息死する事故が起きています。この事故は人が気づけば防げます!しかし、事故は夜中に良く起こり、ある農家は3時間おきに見回っています(大変です!重労働です!)。肥育農家の無念の言葉をこれ以上聞きたくはありません。事故による損失ゼロを目指したい!多くの肥育農家が楽に管理できるようにしたい!そんな思いを実現するシステムを一緒に開発しましょう。

【M120】15:20~16:00 メインステージ
「スマート農業の推進による農業のイノベーション」

農林水産省 生産局技術普及課 課長

秋葉 一彦 氏

農業では、担い手の減少・高齢化の進行等により労働力不足が深刻な問題となっているとともに、依然として人手に頼る作業や熟練者でなければできない作業が多く、省力化、人手の確保、負担の軽減が重要となっています。 農林水産省では、これら課題を解決に導くロボット技術やICTを活用した新たな農業(スマート農業)を実現するため、様々な施策を講じていきます。

【C120】15:20~16:50 セミナールームC
蚕業革命が切り拓く未来

「遺伝子組換えカイコが開く蚕業革命の扉」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構  生物機能利用研究部門 新特性シルク開発ユニット長

冨田 秀一郎 氏

「日本に近代化をもたらした」「戦後の復興を支えた」という枕詞のつく蚕糸業も、高度成長期以降、日本が先進国の仲間入りを果たしてからは産業としての存在感は失われ、いまや「伝統」「歴史」「遺産」といった文脈で語られることが多い。しかし21世紀に入り伝統の技術と最先端科学との融合により新たな蚕糸業を模索するうねりが、昨今いよいよ顕在化してきている。本講演では最先端科学技術により蚕糸業がどのような変貌を遂げているのか紹介するとともに、特にアグリビジネスといった観点から農業現場への実装について解説する。

「遺伝子組換えカイコの 農家飼育に向けた隔離飼育試験」

群馬県蚕糸技術センター 蚕糸研究係・主任研究員

桑原 伸夫 氏

蛍光や高染色性など今までにない特徴を持ったシルクを生産する遺伝子組換えカイコが開発され、付加価値の高い繭生産による農家所得の向上と蚕糸振興が期待できます。農家蚕室で遺伝子組換えカイコを飼育する場合、施設内で拡散防止措置を執って行なう第二種使用等では施設整備のコストが高くなり、飼育量も限られることなどから、従来の開放的な方法(第一種使用等)で飼育できるようにする必要があると考えています。そこで、農家蚕室での第一種使用等による遺伝子組換えカイコの飼育を前提に試験を実施しているので紹介します。

「あつまる山鹿シルクにおける 周年無菌養蚕工場の取組」

(株)あつまるホールディングス 常務執行役員 アグリビジネス部部長

島田 裕太 氏

現在、カイコの高純度のタンパク質の性質を生かした生産技術が開発されているところであり、衣料のみならず、医療品や化粧品、また食品等においてもその利用が期待されているところです。かつて、熊本県でもさかんに行われていた養蚕業。その養蚕業を復活させる取り組みとして、世界最大規模の周年無菌養蚕工場を熊本県山鹿市に建設しました。年間24回カイコを飼育できる周年無菌養蚕システムを実現することで、山鹿から世界へと未来を見据えたチャレンジがはじまります。

【M123】16:10-16:50 メインステージ
「機能性表示食品をとりまく最新情報と今後の課題」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門 食品健康機能研究領域長

山本(前田)万里 氏

2017年9月13日現在、1053品目の機能性表示食品が届出・受理されており、機能性も「内臓脂肪低減、目のピント調節、眠りサポート、疲労感軽減、目や鼻の不快感軽減、骨代謝改善、認知機能改善、体温の維持等」と多岐にわたっている。しかし、その中で生鮮食品は8品目、単一の農林水産物のみを原材料とする加工食品も20品目弱と、農林水産物が少ない現状にある。ここでは、機能性表示食品の現状(機能性関与成分、ヘルスクレーム)、今後想定される機能性表示農産物、機能性表示することによる効果等について話題提供する。

【M201】10:20~12:30 メインステージ
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」

「SIP「次世代農林水産業創造技術」の紹介 -社会実装のステージへ-」

内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 プログラムディレクター (北海道大学大学院 農学研究院 教授)

野口 伸 氏

SIP農業では重点目標として「日本型の超省力・高生産なスマート農業モデルの実現」を掲げ、ロボット、IoT、ビッグデータ形成、AIからゲノム編集技術を駆使し、農業における『Society 5.0』の実現を目指しています。また、もう一つの重点目標「新素材開発等による農林水産物の高付加価値化」では、機能性等の強みを活かした食品や、未利用資源から新素材等を生産するなど、高付加価値戦略を推進しています。SIPも4年目を迎え、成果が多く出てきており、民間企業、農業団体、自治体等との連携を積極的に進め研究成果の社会実装を加速させることにしています。

「超省力・高生産を実現する農作業の自動化・知能化技術」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 革新工学センター ユニット長

玉城 勝彦 氏

複数のロボット農機を運用するマルチロボット作業システム、補助者1名で作業できる自動運転田植機、作物・圃場情報等を的確に判断して作業を行うスマート農機群、そしてこれらのデータを営農管理システムと連動させ農業のSociety5.0を実現するための情報通信技術等、SIP「次世代農林水産業創造技術」「生産システム」で実施中の「農作業自動化・知能化」の研究開発動向を紹介する。

「田んぼの水管理をICTでらくらく・かしこく、遠隔・自動制御」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学部門 上級研究員

若杉 晃介 氏

日々の水管理は水稲作労働時間の2~3割を占めるとされ、経営規模拡大の妨げになっている。また、複数の品種や栽培方法で作付けする担い手農家において、水管理の複雑化も問題となっている。そこで、スマートフォンやPCを使って、遠隔でモニタリングし、「給水」と「排水」の両方を遠隔・自動制御が可能なシステムを国内で初めて実用化した。ここでは、システムの概要と実証試験の結果、及び気象状況に応じて最適な水管理が可能なアプリについて紹介する。

「作物・環境診断情報の先進リモートセンシングおよび高度利用技術」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境センター 特別研究員

井上 吉雄 氏

地球観測衛星センサおよびドローンセンシングシステムを用いた先進的なリモートセンシング技術とそのスマート農業での利用技術を構築しています。広域あるいは高精細度の分光計測技術によって作物生育や土壌の圃場ごと・圃場内の実態情報を適時に収集し、生産管理・作付計画の最適化を支援します。多圃場管理支援システムや可変散布農機など、関連するスマート化技術と連携し、省資材・省力化および高品質・多収の実現を目指しています。

「気象情報をもっと身近に、栽培管理支援情報をもっと手軽に」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境センター ユニット長

中川 博視 氏

約1km四方の空間解像度で、農業に役立つ様々な気象情報を届ける「メッシュ農業気象データシステム」を構築・拡充しています。また、気象情報を活用した水稲、小麦、大豆の発育ステージ予測情報、病害予測情報などの栽培管理支援情報を提供するWEBシステムや、それらの情報をICTベンダーの営農支援ソリューションに届けるAPIを開発し、農業経営の大規模化や温暖化適応に貢献します。

「農業生産データ連携仕様の開発および実装支援」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 革新工学センター 主席研究員・ユニット長

吉田 智一 氏

・複数の多圃場営農管理システムに共通する農業生産管理情報の概念構造に着目して共通データ形式を定式化(FIX-pms形式)
・生育・病害発生予測サービス(API)を利用した機能統合(ワンストップ化)を多圃場営農管理システムの一つである「作業計画・管理支援システム(PMS)」上で実証
・海外動向調査も踏まえ,データ・機能連携仕様を提唱し,関係する農業情報ベンダによる実装を支援し,共通情報基盤(データ連携基盤)の構築を目指す!

「収量や成分を自在にコントロールできる太陽光型植物工場

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き部門 ユニット長

今西 俊介 氏

国産トマト生産の競争力を高めるためには、高収量・高品質を安定的に両立させる必要があります。そのための生産技術を効率的・高精度に開発するため、トマトの栽培特性を遺伝子やその他の生体内分子の挙動を網羅的に解析することによって、ビッグデータとして集積しています。ここから各品種の物質生産や品質を決めている鍵となる因子を見出し、トマト各品種に最適な栽培管理条件を効率的に選抜する指標とし、実際の太陽光型植物工場において、高収量・高品質を達成する実証試験を行っています。

「ジャガイモそうか病防除のための新規栽培体系の開発」

鹿児島県農業開発総合センター大隅支場 環境研究室長

森 清文 氏

長年,ジャガイモ産地を悩ませてきたジャガイモそうか病(以下,そうか病)の発生を抑制するため,片倉コープアグリ株式会社で開発された各種有機質材等を活用し,ジャガイモ生産を安定化する新規栽培体系の開発を試みた。その結果,大麦発酵濃縮液「ソイルサプリエキス」の種いもコーティング処理およびソイルサプリエキスと米ぬかを混合した「ソイルサプリミックス」の施用でそうか病が減少し,可販収量が増加した。またこれらの資材は,有機JAS規格に適応しておりコスト面・安全性の面からも優れた新規栽培体系であると考えられた。

「地域のリグニン資源が先導するバイオマス利用システムの技術革新」

(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 新素材研究拠点 拠点長

山田 竜彦 氏

リグニンは植物細胞壁の主成分で、樹木の20~35%を占める化合物である。樹木が固くしっかりとした構造であるのはリグニンが含まれるからであり、化学構造的にも魅力的な物質として知られる。我々は、スギをターゲットとして、工業材料として展開可能な機能性リグニンの製造システムを開発した。開発したシステムは中山間地域への導入に適しており、地方創生の観点からも期待されている。製造される「改質リグニン」は様々な機能製品に展開可能である。ここでは、リグニンを用いた地域産業創出の取組について紹介する。

【C201】10:30~12:30 セミナールームC
農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業の研究成果紹介 農食事業の紹介1

「南予地域発新規マグロ類「スマ」の 早期種苗完全養殖システムの構築」

(国)愛媛大学 社会連携推進機構 南予水産研究センター 教授

松原 孝博 氏

本研究では、南方性小型マグロ類である「スマ」の早期採卵と人工種苗生産を実現し、完全養殖に向けた基盤技術を構築することを目標とした。そこでは、研究・技術開発段階から産学官民の連携を強化するためレジデント型研究スタイルを導入し、本邦屈指の養殖生産基地南予地域において、地域発の先端的実用化技術を開発した。特に、スマの養殖技術開発では、商業的実用化を意識した100万粒規模の早期産卵誘導とそこからの早期種苗生産を達成し、完全養殖魚による民間試験養殖に到達した。

「北海道の台風被害によるとうもろこし サイレージのかび毒汚染調査研究」

北海道立総合研究機構 畜産試験場 基盤研究部 飼料環境G 主査

湊 啓子 氏

2016年夏の台風の影響を受け、飼料用とうもろこしに広域的な倒伏被害が発生した北海道十勝地域において、とうもろこしサイレージ(CS)のかび毒汚染実態を調査し、倒伏の影響を解析した。CS(233点)のデオキシニバレノール(DON)濃度の平均値は1.5mg/現物kgで、10点が牛用飼料の管理基準(4mg/現物kg)を超えた。DON濃度に倒伏の影響は見られなかったが、ゼアラレノン濃度は倒伏圃場(42点)の平均値が非倒伏圃(46点)よりも有意に高く、倒伏圃場の1点が管理基準(1mg/現物kg)を超えた。

茶生葉との共溶解技術を利用した摘果ミカンからの 高溶解フラボノイド含有食品等の開発」

長崎県農林技術開発センター 研究企画部門 主任研究員

宮田 裕次 氏

摘果ミカンには難溶性だが機能性が高いと言われるヘスペリジンが多く含まれており、デキストリン等による可溶化研究が試行されているものの更なる改善が求められている。本研究では、新たな方法として摘果ミカンと茶生葉を1:3の割合で20分間強く揉み込み乾燥させることにより、ヘスペリジンの水溶性と生体内への吸収性を高めることに成功した。また、この製法で製造した高溶解フラボノイド飲料を開発し、ヒトでの血管柔軟改善作用を明らかにした。
現在、生産現場への技術移転を進めており、ミカンおよび茶生産者の収益向上を目指す。

「菌類を活用したスギ花粉飛散防止液の 高度化と実用的な施用技術の開発」

(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 きのこ・森林微生物研究領域 研究専門員

窪野 高徳 氏

スギ花粉発生源の新たな対策として、自然界に存在し、スギの雄花だけを枯らす菌類(シドウイア菌)を用いて、枝レベルで80%以上の雄花を枯死させる胞子懸濁液を開発しました。また、胞子懸濁液を凍結乾燥することで粉末化に成功し、実際に散布可能な防止剤として粉末で製品化する道が拓けました。さらに、単木~数本のスギ林に対し、効率的な散布施用法として、人力による地上散布法や無人ヘリコプターによる空中散布法を開発し、菌類を用いて人為的にスギ花粉の飛散を抑止できることを明らかにしました。

【C207】12:10~12:30 セミナールームC
「「知」の集積と活用の場における これまでの取組について紹介します」

農林水産省 農林水産技術会議事務局 研究推進課 研究専門官

平野 俊典 氏

農林水産省は、我が国農林水産・食品産業の成長産業化促進に向け、農林水産・食品分野に他分野の知識や技術等を導入して、革新的な研究成果を生み出し、商品化・事業化につなげる産学官連携による新たなオープンイノベーションの仕組み~「知」の集積と活用の場~ を平成28年4月からスタートしています。「知」の集積と活用の場は、産学官連携協議会・研究開発プラットフォーム・研究コンソーシアムの3層構造で構成し、産学官連携研究の推進を図っています。セミナーでは本取組について紹介します。

【C209】12:30~12:45 セミナールームC
「和歌山大学発ベンチャの農業用アシストスーツ」

パワーアシストインターナショナル(株) 代表取締役

八木 栄一 氏

和歌山大学では、平成22年度から農林水産省の研究プロジェクトにて農業用アシストスーツを開発しています。有田ミカン農家はじめ、全国13県で100台規模の実証試験を実施しました。全国の農家やJAのニーズにもとづき改良し、軽量で・着脱しやすく・スムーズな持ち上げ下げ・中腰・歩行のアシストを実現しました。和歌山大学発ベンチャのパワーアシストインターナショナル(株)から製造販売します。このアシストスーツは、「高齢者や女性の腰」の負担を軽減し、高齢化する日本の農業や社会を支えることに貢献したいと考えています。

【M210】12:50~14:20 メインステージ
「IoT時代の農業経営と知財戦略」 ~生産者、IoT企業と弁護士が語る先端農業の課題と展望~

  IoT時代の農業経営と知財戦略の最先端について、農林水産省IoT支援企業、農林水産業生産者、農林水産省食料産業局知的財産課及び弁護士知財ネット(農水法務支援チーム)4人のスピーカーが、2つのテーマ(「農林水産業と知財」と「ICTを活用した農業変革」)を通して、2人ずつそれぞれの取組みを紹介します。さらに、4つの異なる視点に基づくディスカッションをとおして、農業経営の新しいヒントやアプローチをご提案します。

  テーマ1「農林水産業と知財」
弁護士知財ネット(農水法務支援チーム)から、農林水産業に関連する知的財産権を体系的にご紹介しながら、農林水産物のブランド化、IoT活用による効率化、ノウハウの集積等をご紹介致します。 次に、農水省食料産業局知的財産課から、種苗法と地理的表示保護制度(いわゆるGI制度)についてご説明致します。

  テーマ2「ICTを活用した農業変革」
静岡県のスマートアグリカルチャー磐田代表取締役から、ICTで高度にマネジメントされた農業施設を利用して栽培する機能性の高い野菜の生産の現状を紹介し、事業へのICT活用の取り組みを通した農業の変革をご紹介します。さらに、IoTを活用されている生産者側の立場から、生産現場の課題、新たな取り組みと実績をご説明致します。

【モデレーター】
弁護士知財ネット事務局長(農水法務支援チーム代表)  弁護士

林 いづみ 氏

【パネラー】
(株)スマートアグリカルチャー磐田 代表取締役社長

須藤 毅 氏

【パネラー】
農林水産省 食料産業局 知的財産課長

杉中 淳 氏

【パネラー】
弁護士知財ネット農水法務支援チーム事務局

外村 玲子 氏

【パネラー】
(株)Tedy 専務取締役

林 大地 氏

【C211】13:00~15:20 セミナールームC
農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業の研究成果紹介 農食事業の紹介 2

「加工用ホウレンソウの多収抑草技術の開発による機械収穫生産体系の確立」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 畑作研究領域 畑機械・栽培グループ長

石井 孝典 氏

中小規模の加工用ホウレンソウ生産では人力による収穫作業が行われ、労働力不足、労働費上昇が問題となっています。その解決のために、中小規模生産に対応したホウレンソウ収穫機械改良とその効率的利用技術、また、機械収穫に伴う異物混入リスクの低減に向け生産者と加工実需者が一体となった対策技術を組み合わせた加工用ホウレンソウ機械収穫生産体系の確立に向けた取り組みを紹介いたします。

「地域振興に資する薬草栽培事業の技術開発」

(国)金沢大学 医薬保健研究域薬学系 准教授

佐々木 陽平 氏

漢方の医療現場では原料となる生薬の8割が中国産である。日本では生薬生産の技術不足に加え採算面の問題から生産拡大はほとんど実施されない。本研究課題では、生薬生産に関わる栽培と加工技術開発を地域振興活動と合わせることで、技術と採算の両面を解決することを目的にした。薬用作物4種類について石川県での試験栽培を経て栽培マニュアルと中国産との識別法を構築すると共に非薬用部位を利用した商品開発も行った。これらの活動は金沢大学と民間団体、白山市の産学官共同事業に発展し、地域振興として重要な薬草栽培事業となった。

「被災地域の営農再開に向けた熊本地震による農地・作物生育への影響に関する調査研究」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター企画部産学連携室 農業技術コミュニケーター

岡本 正弘 氏

平成28年熊本地震では、震源地に近くの農地で地表に凹凸が発生した。ドローンによる観測の結果、農地の凹部は基盤整備以前の圃場の水路部分と一致することがわかった。凹部では、水稲は葉色が濃く生育旺盛で多収となった反面、大豆では湿害により減収した。沿岸部で生じた液状化は、トマトの次期作には影響しなかった。ウンシュウミカンは、石垣の崩壊により根が3割以上露出すると生育に影響した。阿蘇地域で水稲の代替として作付けされた飼料作物は、栽培経験のなさや湿害等により、本来の収量を発揮できない場合があった。

「クロバネキノコバエ科の一種の生態の解明及び防除手法の開発」

埼玉県農業技術研究センター 生産環境・安全管理研究担当 担当部長

小俣 良介 氏

埼玉県北部のネギ・ニンジンほ場でクロバネキノコバエ科の一種Bradysia sp.による甚大な被害が発生し、栽培が困難な事例も見られた。本種は国内未記録種と考えられ、生態や防除対策等が不明のため国内の植物防疫上大きな問題となった。そこで、緊急対応研究課題として本研究を実施し、その結果、本種と国内既発生種との識別法を開発し、夏期~冬期にかけての発生生態を解明、生産現場での有効薬剤の効果を確認した。これら成果を「防除の手引き」として公表し、早期警戒のため和名ネギネクロバネキノコバエ(仮称)を提唱した。

「良日持ち性および萎凋細菌病抵抗性を有するカーネーション品種の開発」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門 花き遺伝育種研究領域 ゲノム遺伝育種ユニット ユニット長

山口 博康 氏

カーネーションは重要な切り花品目で国内流通量は微増傾向にあるが国内産比率は年々減少している。そこで国内生産の回復を目指し、消費者ニーズの高い日持ちが良い品種、重要病害である萎凋細菌病への抵抗性を有し安定生産を可能とする日本オリジナル品種の開発を進めてきた。農食事業により開発した「カーネ愛農1号」は従来品種の約3倍の日持ち性を有する品種である。生産者や市場関係者等の評価を受けながら品種育成を進める中で高く評価され、種苗会社3社との許諾契約に至り、今年から生産者による切り花生産が開始されている。

【M217】14:40~16:40 メインステージ
農業分野の「第4次産業革命」の実現に向けて

「データを駆使した次世代農業」の展開に向けて ~農業データ連携基盤の創設~」

内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 副政府CIO  慶應義塾大学 環境情報学部准教授/ 医学部准教授(兼担)

神成 淳司 氏

農業者がデータを駆使して生産性の向上や経営の改善を実施する「次世代農業」の展開に向け、「農業データ連携基盤(データプラットフォーム)」の構築が官民共同で進められています。様々なベンダー間のデータ連携、土壌・気象などの公的データの利活用など様々な展開が具体的に動き出しつつあります。取り組みの最前線と今後の方向性について紹介します。

「 SIP「次世代農林水産業創造技術」における スマート農業の成果及び今後の展開について」

国立大学法人 北海道大学 大学院農学研究院・教授

野口 伸 氏

内閣府SIP「次世代農林水産業創造技術」では、平成26年度より水田農業におけるロボット技術、ICT等の先端技術を活用し、超省力・高生産のスマート農業モデルの実現を目指した技術開発を進めています。衛星測位システムを活用したロボット農機の開発状況など、これまでの成果及び今後の展開について紹介します。

「人工知能(AI)、ロボット等を活用した 農業分野での研究開発について」

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人工知能研究センター 副センター長

谷川 民生 氏

昨年の夏以降、経済産業省と農林水産省の間で研究開発施策の連携強化を進めています。産業技術総合研究所において、農研機構等と共同で進めている人工知能(AI)やロボット技術の活用に向けた研究の取組状況等について紹介します。

「熟練農業者のノウハウの「見える化」の取組について」

NECソリューションイノベータ株式会社 執行役員

島津 秀雄 氏

人工知能(AI)やIoT等の活用により新規就農者の技術習得の短期化や生産性の向上などを実現するため、熟練農業者の技術の継承などに資する新たなシステムの構築に取り組んでいます。「匠の技」の学習システムなど、これまでの取組状況や今後の展開等について紹介します。

【C219】15:00~15:40 セミナールームC
―生物多様性経済連携―

「自然資本を活かした農林水産業」

農林水産省 大臣官房政策課 環境政策室 室長

中川 一郎 氏

農林水産省では、農山漁村における生物多様性保全に資する活動の意義とその価値を経済的に把握するとともに農林水産業者と企業等との経済的連携を構築するための手法を手引きとして取りまとめました。また、生物多様性保全の経済連携活動を地域価値向上に活かしていこうという活動事例を紹介するシンポジウムを開催してきました。今回は、これらの取組を紹介するとともに、企業におけるCSR(企業の社会的連携)などの取組について情報を提供します。

「都市と農村をつなぐイノベーション・インターメディアリーズ」

東京大学大学院 農学生命科学研究科 准教授

橋本 禅 氏

「生産者/農山村」と「消費者/都市」のつながりの変化をイノベーションの一つと考えて、農業分野のイノベーションに関連する仲介者(インターメディアリーズ)の役割について検証を行なってきました。これまでの調査では、「生産者/農山村」と「消費者/都市」のつながりの強化には、様々な主体/組織への情報や資金、技術支援等を通じて主体間での取引や連携を促すことが大切であり、その鍵を握るのがイノベーションの仲介者です。今回は、イノベーションが、新しい需要を促すプロセスについて紹介します。

【C222】15:50~16:20 セミナールームC
「BoP市場への参入:日本の最先端農業IoT技術の実証試験を例に」

国際熱帯農業センター(CIAT)農業生物多様性部門 主任研究員

石谷 学 氏

国際熱帯農業センター(CIAT)は、遺伝資源を保全すると同時に、持続的で環境への負荷が少ない農業生産を達成するための農業研究により、開発途上国の貧困削減に取り組んでいます。今回の講演では、南米コロンビアで行われている、日本の最先端農業IoT技術を活用した精密な栽培管理による生産性向上に向けた取組ついて紹介するとともに、BoP市場に日本の農業機械メーカー、IT関連企業及び稲作農業者等の参入に向けた、今後の新たなビジネスマッチングの創出のための連携のあり方や、現在の連携状況について紹介します。

【C301】10:30~11:00 セミナールームC

「優れた品質・技術の見える化・実用化に向けて~新生JASの活用」

農林水産省 食料産業局食品製造課食品規格室 食品規格室長

松本 修一 氏

JAS制度は大きく変わりました。
新たなJAS規格・認証は、農林水産・食品分野に携わる皆様の優れた商品やサービス、技術、取組を見える化し、実用化に向けたツールとして、また、アピールのための手段として使い易いものになりました。本セミナーでは、こうしたJAS規格・認証の活用アイデアについて事例を含めて紹介するとともに、新たな規格を必要とする事業者、研究者の皆様からJAS規格をご提案いただく際の手続を説明します。

【C307】12:00-13:00 セミナールームC
食料生産地域再生のための先端技術展開事業

「3新(新品目・新品種・新技術)導入による新しい果樹産地の形成~シャインマスカットの長期出荷など~」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門 生産・流通研究領域長

中村 ゆり 氏

被災地の早期復興を図るためには、短期間で収益をあげることができ、かつ高い収益性が期待できる果樹品目を導入するとともに、被災地の復興を印象づける新たな加工品等を開発することで被災農家の経営安定を図ることが重要です。本講演では、ブドウ「シャインマスカット」、レッドカーランツ等小果樹類、クリ「ぽろたん」を対象に、新技術を駆使した実証研究、加工品開発の事例をご紹介致します。

「福島から花き生産もイノベーション~水耕栽培によるトルコギキョウの周年生産~」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門 花き生産流通研究領域

福田 直子 氏

冬期の日射量が豊富な福島県浜通り地域は施設園芸の適地であり、今後法人などによる大規模な花き専業経営体が成立する可能性があります。本講演では、これまで取り組んできた人工光閉鎖系育苗、水耕栽培、複合環境制御、加湿冷却システム、品質保持・蕾切り開花技術を組み合わせた革新的な栽培体系についてご紹介致します。

「『みやぎギンザケ』を復活させる新たな生産技術体系の取組」

(国研)水産研究・教育機構 北海道区水産研究所 生産環境部長

黒川 忠英 氏

宮城県のギンザケ養殖は、地域の基幹産業でしたが、大震災で生産・加工基盤の大半を失いました。これまでに震災前の8割程度まで生産が回復したものの、外国産や他地域との市場間競争が激しさを増しており、生産の効率化とともに市場ニーズにあった良質な養殖ギンザケを供給するための技術開発が必要とされています。本講演では、これまで取り組んできた低コスト飼料と電気刺激装置を活用した新たな生産システムやEIBS魚病の簡易検査法についてご紹介致します。

「復興のシンボルとなる宮城の新規水産加工食品」

(国研)水産研究・教育機構 水産大学校 食品科学科 教授

前田 俊道 氏

宮城県は日本屈指の水産加工地域でありましたが、震災後の加工品を出荷できない間に市場を失ってしまいました。そこで従来になかった新たな付加価値の付与、生産性の向上、機能性を付与した新規商品の開発、加工残滓の有効利用などの技術導入により水産加工業の復興を加速化する必要があります。本公演では、これまで取り組んできた先端加工技術を導入した低・未利用資源などを有効活用した食品製造開発の成果についてご紹介致します。

【M307】12:10~12:50 メインステージ

「日本発の技術による次世代施設園芸の展開」

農林水産省 農林水産技術会議事務局研究企画課・室長(技術政策)

山田 広明 氏

日本の野菜は、施設栽培の普及と南北の産地をつないだリレー出荷によって、通年供給が可能になりました。特にトマト等の果菜類は、施設栽培が生産の大半を占めています。しかし、施設栽培は、面積や経営体数の減少に加え、生産者の高齢化も進むなど、生産力低下が危ぶまれています。将来にわたり安定した野菜の供給体制を維持するには、生産性をより安定・向上させる環境制御技術やロボットなどの新技術の開発と普及拡大が重要な課題です。そこで、施設園芸について、国が描く日本発の技術開発の動向と目指すべき将来像をご紹介します。

【M311】13:00-14:40 メインステージ
「活躍する農業ベンチャーの取組」

政府横断的にベンチャー企業を支援する取組が進みつつある中で、農林水産省としても、農業ベンチャーの活躍や参入促進を農業のイノベーションを促進する手段の一つとして位置づけ、様々な取組を進めているところです。ベンチャー企業との連携の促進も目的とした本セミナーでは、農業分野において、先端的な技術やノウハウ等を有し、それらを新たなビジネスに活用されようと取り組んでいるベンチャー企業の方々に登壇いただきます。

「先端農業へ、GRAの挑戦」

(株)GRA 新規就農事業、海外事業リーダー

渡辺 周 氏

GRAは東日本大震災をきっかけに活動を開始、2012年に設立された生産法人です。毎年規模を拡大し宮城県山元町でのイチゴの作付面積は20,000㎡を超えるまでになり、海外インドでの生産や新規就農支援なども積極的に行っています。優れた匠の技や暗黙知を見える化・定量化することにこだわり新規参入者を育て、7つある農場の責任者は全て30代以下という組織です。時間がかかり人に頼るところが多いイチゴ栽培の中で、どのように全国平均反収の約1.5倍以上を実現したのか、効率化やIT化への挑戦についてお話しします。

「農業版インダストリー4.0を目指して」

(株)エムスクエア・ラボ

大迫 敬介 氏

農業は社会基盤産業であり、人手不足、高齢化という苦しい今こそ再編のときです。既存機能を取捨選択しながら、つむぎ直すことでその力を持続的に発揮できるようになると考えています。

「日本発・世界でも求められる新しい農産流通のカタチ」

プラネット・テーブル(株)代表取締役

菊池 紳 氏

農産物流通支援プラットフォーム「SEND」や、農産物取引管理ツール「SEASONS!」を通じて、生産者の持続的な経済活動を支援しています。需要予測に応じた生産・出荷計画支援や、タイムラグやフードロスを極小化する物流、農産物取引に最適化した決済や金融サービスなど、農畜水産業者に本当に求められるサービスや機能と、それを支える技術についてご紹介いたします。

「家族農業で年収1000万を支える技術」

(株)プラントライフシステムズ 代表取締役

松岡 孝幸 氏

弊社は自動運転等の制御技術であるモデルベース開発を利用したAI+IoT技術を安価に提供し、初期コストを大幅に削減且つ収穫量や品質を向上させる技術を提供しています。当日は弊社の今後の方向性や技術を利活用し業績を向上した農家例や、地方創生事業への新規農業の取り組みなどをご紹介致します。

「U-motion 牛のライフログがもたらす経営革命」

デザミス(株)マーケティングセールス部 部長

中山 聡 氏

牛のライフログをビッグデータとして取り込み、 ai分析による付加価値のある情報をお客様に提供し、畜産経営を 次のレベルへ引き上げる事ができるのが、デザミスのU- motionです。牛の1日の行動を8 motionで把握することで、「あの時、何が起こっていたのか 」を知る事ができます。現在は、 業務提携先である飼糧会社からの紹介を受けながら、 1軒1軒訪問し、丁寧に必要性を説明しています。 損失コストの削減という経済性とU-motionの可能性に共感していただいた畜産経営者からの導入 を得ています。

「畑・田んぼ・作物に一番近い先進技術でより良い農業へのチャレンジを支える」

(株)農業情報設計社 代表取締役

濱田 安之 氏

畑・田んぼで農作業をするときに、真っ直ぐ、等間隔に作業を行うことは投入する肥料や薬剤、燃料の低減や、能率向上、収穫量・品質の確保に最も大事なことですが、実はとても大変です。 私たちはスマホ・タブレットと外付けのGPSを組み合わせて真っ直ぐ、等間隔な作業をアシストする農業版カーナビアプリを中心とした技術を提供しており、すでに世界中の農業者の方々にお使い頂いております。本講演では私たちのプロダクトとその可能性。未来についてご紹介いたします。

【C311】13:10~15:40 セミナールームC
農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業の研究成果紹介 食農事業の紹介 3

「蒸熱処理は化学農薬無しで徹底消毒!クリーンなイチゴ苗から始まる防除体系を構築」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 園芸研究領域 主任研究員

高山 智光 氏

冬季の施設イチゴ栽培では、病害虫の主要な発生要因は汚染苗による持ち込みなので、夏季育苗中の防除が重要である。しかし最近では農薬の効きにくい病害虫が増えて問題になっており、化学合成農薬に頼らない防除法が求められている。ハダニ・アブラムシ・うどんこ病よりもイチゴの苗は耐熱性が高いことを明らかとし、この温度差を利用して、苗に大きな障害を与えずに病害虫だけを死滅させる防除条件と蒸熱処理防除装置を解明・開発した。さらに蒸熱処理前後の防除体系を開発した。この技術開発と今後について講演する。

「“いつでも天敵”~天敵増殖資材による施設園芸の総合的害虫防除体系の確立・実証 ~ 」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター 虫・鳥獣害研究領域 上級研究員

下田 武志 氏

施設園芸作物では、薬剤防除が難しいハダニ、アザミウマ、コナジラミが問題となります。これら微小害虫の防除には天敵カブリダニの製剤が有効ですが、取扱いが難しく、過酷な栽培環境(化学農薬、かん水、乾燥など)では天敵放飼に失敗しやすいことが課題でした。今回、農研機構を中心とする当研究グループは、天敵保護装置(バンカーシート®)の中にカブリダニ製剤を入れ、より簡単・確実に放飼する技術を開発しました。本技術は、イチゴ、キュウリ、ナス、サヤインゲンなどの施設野菜を中心に、微小害虫の防除に利用できます。

「変動気象に対応可能な水稲高温障害早期警戒・栽培支援システムの開発」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 気候変動対応研究領域 上級研究員

大野 宏之 氏

近年の温暖化傾向を背景に、水稲では登熟期間が高温となる頻度が高まり、白未熟粒や胴割れ粒などの高温登熟障害が深刻化し広い地域で問題となっている。
 そこで、白未熟粒や胴割れ粒の発生を施肥量や刈取時期の調整により低減させる技術を開発するとともに、気象予測データと発育予測モデルから水稲の登熟期間とその期間中の気温推移を予測する手法を開発して統合し、気象を先取りして水稲の高温障害を低減させる手法を開発した。

「高機能バイオ肥料を利用した水稲の増収減肥栽培技術の実用化」

(国)東京農工大学 大学院農学研究院 教授

横山 正 氏

Bacillus pumillus TUAT1株芽胞をケイ酸質の基剤に封入し、常温で長期保管ができる微生物資材(以下、バイオ肥料と呼称)を開発した。バイオ肥料を水稲播種時に施用すると、苗の発根が促進され、田植え後も根張りが良くなり、土壌の窒素養分を効率的に吸収する。この作用により有効分けつが増加し、玄米換算で10~20%増収し、また、窒素施肥量を30%減肥した場合でも減肥前と同等の玄米収量が得られる。本技術により、従来は実現が難しかった生産性を損なわずに環境負荷を減らせる水稲栽培が可能になった。

「安全・安心なかぼちゃ生産に向けた土壌残留ヘプタクロル類診断技術の開発」

北海道立総合研究機構 中央農業試験場 農業環境部環境保全G 研究主任

板垣 英祐 氏

有機塩素系殺虫剤であるヘプタクロルは1972年に登録が失効しているが土壌残留性が高く、かぼちゃを含むウリ科植物に特異的に吸収され、かぼちゃ果実では現在でも残留基値(0.03ppm)を超過する危険性がある。本研究では、かぼちゃ果実が残留基準値を超過しない最大の土壌中ヘプタクロル類濃度と現地ほ場での土壌中ヘプタクロル類の濃度分布を明らかにし、これを基に土壌残留しているヘプタクロル類について土壌診断を行い、かぼちゃの作付け可否を判断する手法を示した。併せて、ELISA法による土壌中ヘプタクロル類の分析法を実用化した。

「高品質ゴマ「まるひめ」とナタネ「ななはるか」の輪作体系によるプレミアムオイル生産」

(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 次世代作物開発研究センター ユニット長

大潟 直樹 氏

ゴマ新品種「まるひめ」は早生でリグナン含量が高く、ナタネ新品種「ななはるか」は早生でエルシン酸を含まないため、ともに高品質なプレミアムオイル(圧搾油)の原料になることが期待されています。今回は、温暖な九州における「まるひめ」と「ななはるか」の二毛作栽培体系や両品種の成分特性を活かしたプレミアムオイルの利用法、さらに現地の生産者と実需者による実証試験からみた6次産業化の可能性を紹介します。

「安全な路網計画のための崩壊危険地ピンポイント抽出技術」

(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 研究ディレクター

大丸 裕武 氏

林業活性化の鍵は高密度路網の整備だといわれています。しかし日本の山は地質的に脆く崩れやすいため、崩壊危険地を事前に予測して丈夫な道作りを行う技術が重要です。私たちは航空機レーザー測量による高解像度地形データや地下流水音探査技術を用いて効率よく危険地を抽出する技術を開発しました。また、安全なルート選定、適切な排水、盛土の安全管理を支援する技術を開発しました。研究成果はマニュアルの配布や全国各地の講習会を通じて普及しており、危険地抽出の基盤となるCS立体図についてはG空間情報センターを通じて公開しました。

【M318】14:50-16:20 メインステージ

「農業界にムーブメント!異業種コラボの農業女子プロジェクトを徹底解剖!」

農林水産省 経営局就農・女性課 女性活躍推進室 室長

久保 香代子 氏

女性農業者の存在感を高め、農業のイメージを刷新することを目的に2013年にスタートした農業女子プロジェクト。農業機械メーカーはもちろん、農業と全く関係のない下着・住宅メーカーまで、幅広い業界の民間企業約30社と連携し、女性農業者ならではのアイデアを企業の技術・ノウハウと結びつけ、新しい市場・価値を生み出しています。 最近では、教育機関とも連携し、未来の農業女子を育成する取組みも始めました。基調講演のほか、農業女子プロジェクトに参加したことによる成果について企業を交えたパネルディスカッションを行います。
(パネルディスカッション参加企業:農業女子プロジェクト参加企業 井関農機、東和コーポレーション、豊島、丸山製作所、ワコール)

【C322】15:50-16:20 セミナールーム C

「農業資材価格の引下げに向けた取組」

農林水産省 生産局技術普及課 生産資材対策室長

今野 聡 氏

平成29年8月から施行された農業競争力強化支援法に基づき、農林水産省では良質かつ低廉な農業資材の供給に向けた取組として、資材価格の「見える化」や、肥料等の銘柄集約、生産性向上のための資材業界再編の推進等を進めているところです。農業者の所得向上に資する資材価格の引下げに向けて、関係事業者や農業者の皆様のご意見も踏まえながら、引き続きこれらの取組を着実に実施します。